所得拡大促進税制-給料が増えると会社の税金が安くなる?

会計・税務
適用できるのは黒字の会社のみ!

所得拡大促進税制とは、

従業員のお給料が増えればその分法人税を安くしてあげますよ

という制度です。

従業員の手取を増やし消費活動を盛んにし、経済を活性化しようとの意図です。

 

さて、この所得拡大促進税制ですが、数回の改正を経て、平成30年4月1日以後開始事業年度適用のものが最新となっています。

制度としては、中小企業向けと大企業向けの2種類あります。

概要を各々ご説明します。

 

 

中小企業向け賃上げ制度

<要件>

  1. 賃金総額が前年度を上回り、かつ、賃金引上げ率が前年度比+1.5%以上
  2. 賃金総額が前年度を上回り、かつ、賃金引上げ率が前年度比+2.5%以上さらに教育訓練費増加が一定割合以上

<措置>

  • 1.を満たす場合  賃金総額の対前年度増加額×15%の税額控除※1
  • 2.を満たす場合  賃金総額の対前年度増加額×25%の税額控除※1

大企業向け賃上げ制度

<要件>

  1. 賃金総額が前年度を上回り、かつ、賃金引上げ率が前年度比+3.0%以上さらに国内設備投資が当期償却費の90%以上
  2. 1.の条件プラス教育訓練費の増加が一定割合以上

<措置>

  • 1.を満たす場合  賃金総額の対前年度増加額×15%の税額控除※1
  • 2.を満たす場合  賃金総額の対前年度増加額×20%の税額控除※1

 

 

中小企業者等※2は上記2つのうちから有利な方を選択することができます。

いずれも税額控除となっていますので、そもそもの法人税額が発生しない赤字会社の場合には従業員のお給料が増えたとしても適用できません。効果があるのは黒字会社の場合のみです。

 

なお、従来の所得拡大促進税制と比較し、次のような変更が入りました。

  1. 適用要件のうち、「基準年度」の概念がなくなった
  2. 継続雇用者は、適用年度と前年度の「全ての月」においてその法人の給与等を受けた者と変更された
  3. 設立事業年度の適用は不可となった

賃金引上げ率を算出する際の継続雇用者の考え方がシンプルになりました(b)。給与データを管理する人事の方にとっては朗報です。従来は継続雇用者に該当する方を抽出するのに相当悩んだと思いますが、今回の変更で分かりやすくなりました。

また、従来は設立1期目から所得拡大税制の適用が可能でしたが現行制度では適用できなくなっています(c)。

 

税額シミュレーションの際は、これらの点についてご留意ください。

 

ご質問等ございましたらこちらまでお気軽にお問い合わせください。

 

※1 上限は法人税額の20%

※2 原則は資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人

以 上